著者インタビュー1 伝えたいことは?「黒子のバスケ」の逆とは?

 友人でカウンセラーのY.K.さん(女性)に、私がこのエッセイを書いた動機についてインタビューしてもらいました。

−−この作品で真名さんが狙ったのはどんなことですか?

……そうですね。一言でいえば、ボーイズ・ラブ(以下BLと略す)愛好家とそうでない人の架け橋になることでしょうか。

−−具体的にはどういうことですか?

BL愛好家がBLを愛する奥深い動機を、愛好家でない人にも分かりやすく、面白く伝えてみたいと思ったんですね。

−−それはかなりビックリですね(笑)。なぜ、それをやってみようと思ったんですか?

いつだったか、はっきり覚えてないんですが、「『黒子のバスケ』がどうして腐女子に人気があるのか」を考えてみたことがあったんです。
※『黒子のバスケ』は『週刊少年ジャンプ』(集英社)に連載された藤巻忠俊作のマンガです。
『黒子のバスケ』は大ヒットした少年マンガですから、もちろん色んな層に訴えかけるものがあったと 思うんですよ。「イケメンの登場人物が多いから」という説もありますが、私はもっと別の側面があると思っていて。

−−それはどんなことですか?

主人公の黒子が、体格的に劣っている部分とか、存在感のなさとか、非力さといった色んなハンデを背負いながら、それを逆手にとって、オンリーワンの存在として活躍するわけですよ。

−−それはそうですが、それと腐女子がどうつながるんですか?

これは、BL愛好家(腐女子)としての私の主観なんですが、黒子が大好きなバスケをやり続ける中で直 面する劣等感や屈辱や不安、それから、決して諦めず心に抱き続ける夢と野望、そして目標を達成した ときの喜び、そういったものが、女性が生きて行く上で感じる不安やその他の感情と通じるものがあっ たからだと思うんです。

もちろん女性であることについて特に違和感や不安をもたない女性もいるでしょう。しかしこの作品 は、女性だけでなく、色んな形のハンデを抱えた人の心に訴えたと思っています。

−−なるほど。

しかも、ハンデを乗り越えるために、自分の努力だけで何とかしようとするのではなく、パートナーと の深い信頼やチームワークで乗り越えていきますよね。そういった部分も女性の生き方と重なる部分が あるんじゃないかと感じています。
だから、この主人公は、私のような女性にとって、自分の不安や希望を重ね合わせることができる格好 のキャラクターだったんだと思うんです。しかもかわいいし(笑)。だから、女性にとって、「フィク ションの世界で黒子くんになってみたい」、「その世界で男性とセックスしてみたい」っていうのは、 ある意味自然なことだと思うんですよ。

−−大分わかってきました。

さらに言えば、思春期に、男性と性的な関係を持つということについて、不安や恐れを感じたことのあ る女性はたくさんいると思うんです。しかも多くの場合、それについての欲望や夢も女性は持ってい る。それは正に、バスケに対する黒子の立ち位置と同じです。そして、その不安を、ちょうど黒子がバ スケで成し遂げたようにして乗り越えていけたら−−、そういった願望があるんじゃないでしょうか。

−−ああ…なるほど−−。で?それが真名さんのエッセイとどう繋がるんでしょう?

私はこの逆がもしできたら、面白いんじゃないかと思ったんです。

−−「逆」というとどういうことですか?

えーとですね。誰もが合意できる現実のレベルでは、男性である「黒子くん」の悩みと今言ったような 女性の悩みとは、別物と言えます。しかし今説明したような共通点を感じとる人もいるわけです。彼女 たちは現実には自分が女性であると認識しているわけですが、一方では「自分は黒子である」という夢 を見ているのです。
※この説明にはアーノルド・ミンデルが提唱したプロセスワークの「現実の三つのレベル」の概念を使 用しています。
こんなふうに、人に夢を見させることができるのが、フィクションの力、芸術の力、という風にも言え ると思います。つまり、読者にとって現実的には自分と共通点がないようなキャラクターに感情移入さ せることができるわけです。そして、その体験を経た読者は、以前と違った目で現実を見るようになる かもしれない−−というオマケ付きで。
※BL愛好家の女性が黒子以外の男性キャラに感情移入する場合もあると思いますが、ここでは話を単純 化しています。
で、問題はこの「逆」です。 BL愛好家である私が、自分がBLを愛する理由を心の深層にまで降りて行って掴み取るとき、その本質は、BL愛好家でない女性や、男性にも通じるのではないか、ということです。 私はシンプルにその可能性を信じてみることにしました。

(つづく)

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( #黒子のバスケ #BL )

 

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