痛い青春

「セックスがしたい。ただし挿入されるのでなければ」

というのがあの頃の私の正直な気持ちだった。

 

多分、私はとても怖がりなのだ。

 

そして、初めてのときはどんな相手がいいのか考えてみるに

童貞か少ししか経験のない男性?

−−−−いや、とんでもない!

処女とセックスした経験のない人?

−−−−いや、とんでもない!

……

てな具合。

 

いや、そもそもまず

「挿入されたことのない人に挿入される」ということ自体が

とても微妙なことだと私は思っていた。

 

いやいや、だって普通でしょ?

注射された経験のない医者に注射されたいと思わないでしょ?

真面目な話。

 

そんなわけで

どこか「両性具有的な匂いがする」と私が勝手に感じることのできる、

女性としての先輩でもあり、なおかつ異性愛の男性であるような男を私は求めていた。

 

お互い好きになれて、セックスをしたいと思える関係というのがまず大前提であり、その上にさらにこれだけの条件を付け加えたら、これらをすべての条件を満たす人物を、自分のお粗末なコミュニケーション能力の範囲内で見つけ出すのは至難であり、それを考えるにつけても「長くお付き合いができそうか」などという基準は、私の中ではるかに優先度の低い事項ということになるのだった。

 

昔祖父が、ちょくちょくお世話になっていた病院で、

注射をすると聞いて逃げ帰った話をしてくれたことを

私は思い出す。

なんでもそのお爺ちゃん先生は、注射がどうしようもなく下手ッピーだったらしい。

若い頃から下手だったのか、年をとって手元が狂うようになったのかは不明。

奥さんのナースは注射の手際が良かったらしいのだが、処置室に通された私の祖父は、お爺ちゃん先生の方が注射を担当するのだという気配を感ずるや否や、診療費だけをその場に残し病院を飛び出したというのだ。

 

−−−−いやぁ、おじいちゃん、私も同じ気持ちだったよ!

と私は心の中で叫ぶのだった。

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